学会連携・震災対応プロジェクト

■リレーコラム

鈴村興太郎(法と経済学会会長、日本経済学会元会長;早稲田大学)

 私の研究分野は厚生経済学と社会的選択の理論です。様々な経済制度の設計と実装の理論的な基礎を研究すること、現実の経済政策を批判的に評価して、その改善のための提言を行うことを課題とする研究分野であるだけに、現実の事態の推移を後追いしてミネルヴァの梟のように黄昏に飛ぶだけでは、分野の役割期待に十分応えたことにはなりそうにありません。学会連携・震災対応プロジェクトで東日本大震災に直面して科学の《知》を絞るうえでも、復興と再建のための制度設計と政策立案に対して、積極的・事前的な提言を志したいと思っています。

菅原正孝(環境技術学会会長、水資源・環境学会元会長;大阪産業大学)

 私は環境技術学会の会長を務めておりますが、当学会では研究大会において震災関係を議論する場を設けるため特別プログラムの準備を進めております。また、学会誌の『環境技術』は月刊誌で、4月号では速報として<福島第一原発事故の環境影響>を、5月号では、緊急特集として、<軽水炉における原子力災害の環境影響>を企画し、専門的な知見を集め、発信をしております。また、企業会員などからの技術提供の申し入れが既にあるので、今後は、現地のニーズと提供される技術とのマッチングなども行いたいと考えております。

竹下 賢(温泉学会会長;関西大学)

 私は温泉学会の会長を務めておりますが、今回の東日本大震災では会員の温泉宿が二つほど流され、被災地における観光もほとんど機能していないという状況に直面していて、学会が課題解決への途を考えるという意味での対応を迫られています。また、温泉と関わりの深いエネルギー分野のトピックで、今回の災害にもかかわるものとしては、地熱発電の問題がありますが、現実には発電施設が少ないだけでなく、出力や採算性といったところに課題があります。さらに、それだけでなく、資源の保全を願う温泉業者との折り合いがつかないという問題を抱えており、自然からのエネルギー調達という課題を学会としてはあくまで学問的に考えていきたいと思っています。

仲上健一(国際公共経済学会会長、政策情報学会会長;立命館大学)

 2011年3月11日に発生した未曽有の東日本大震災は、これまでの社会や経済の有り方に大きく影響しています。今回の被害の甚大さ、深刻さをつぶさに見た場合、「想定外」という考え方は、安易に用いるべきではありません。学会連携・震災対応プロジェクトは、「公共」、「経済」、「社会」、「環境」、「地域」等、社会科学系の学会の関係者が、連携を図り、現実を正しく認識し、将来に向かっての政策の方向性を真摯に探り出すことを目的にしたプロジェクトです。このプロジェクトは、研究者を束ねるネットワークである学会がその固有領域の枠を超えて、お互いに切磋琢磨して、叡智を出し合い「未来への希望」を生みだすための「ネットワークのネットワーク」という機能を持っています。今回の震災で、「絆」の重要性が改めて強調されています。本プロジェクトも、いわば、「学会の絆プロジェクト」です。だからこそ、柔らかく、しなやかな組織行動をもって、学会の底力というものを出したいと考えています。